今回は、コーティング業界のちょっとした裏側を話します。
最近のコーティングショップを見ると、天井や壁一面にLEDを並べた、とにかく明るい施工ブースをよく見かけます。
黒い壁に白いLED。磨き上げたボディには何本もの光が映り込み、写真や動画ではものすごく綺麗に見える。
確かにプロっぽい。
「これだけ明るければ、細かな傷まで全部見えているんだろう」
そう思う人も多いと思います。
でも、実際に塗装を磨き、傷を追いかけている側から見ると少し違います。
むしろ光を増やしすぎることで、本来確認したい細かな傷や磨き跡が見えにくくなることさえあります。
施工ブースを格好よく見せるための照明と、塗装の状態を正確に見るための照明。
似ているようで、この2つは別の話です。

傷は「明るさ」で見えているわけではない
そもそも、透明なクリア塗装に入った細かな傷は、なぜ見えるのでしょうか。
傷そのものに色が付いているわけではありません。
正常な塗装面と傷のある部分では、光の反射や散乱の仕方が違います。
その違いによって周囲とのコントラストが生まれ、私たちの目には「傷」として見えています。
つまり、傷を見るために重要なのは単純な光量ではありません。
ここがポイントです。
光を増やせば増やすほど、傷が見えるわけではない
天井からLED。
左右の壁にもLED。
正面にもLED。
さらに手持ちのライト。
一見すると、これだけ照らせば「傷の逃げ場なんてない」ように思えます。
ところが、光沢の高い塗装面ではそう単純ではありません。
あらゆる方向から光を入れると、ボディには大量の照明や周囲の景色が映り込みます。
本来見たかった微細な傷よりも、
天井の照明
壁の照明
周囲の映り込み
強いハイライト
といった情報の方が強く見えてしまうことがあります。
さらに、強い光源やその反射が視界に入ることで「グレア」と呼ばれる現象も起こります。
簡単に言えば、眩しさによって低コントラストのものが判別しにくくなる状態です。
薄い洗車傷。
淡いバフ目。
ホログラム。
塗装の曇り。
こうした微妙なものを見るときには、
傷を見るために増やした光が、逆に傷を埋もれさせてしまうこともあります。

あえて暗くした方が見える傷もある
微細な傷を確認するときは、周囲の照明を落とし、検査したい光だけを塗装へ当てることがあります。
余計な光を減らすことで、
たとえば、小さく強い点光源を塗装へ当てる。
すると、太陽の下でスワールマークが浮き上がるように、細かな傷が突然見えてくることがあります。
ライトを動かす。
見る位置を変える。
照射角度を変える。
光量を変える。
周囲を暗くする。
すると、さっきまで見えなかった傷が現れる。
傷が急に増えたわけではありません。

LEDだけが正解でも、ハロゲンだけが正解でもない
ここから少しマニアックな話です。
長く磨きをやっている人の中には、
「昔のハロゲンの方が傷が見えた」
「水銀灯の下だと妙に傷が分かる」
という感覚を持っている人もいます。
これも、単なる昔話とは限りません。
たとえばハロゲンランプは、小さな発光部から強い光を一方向へ出しやすい。
そのため、塗装面の正常な反射と傷によって散乱した光との差が生まれ、微細な傷が見えやすくなる条件があります。
水銀灯もLEDとは光のスペクトルや発光の仕方が異なるため、塗装色や傷の状態によって見え方が変わることがあります。
ただし、
現在のLEDでも、小さな高輝度スポット、狭い照射角、高い演色性、色温度や光量の調整などを組み合わせれば、非常に優秀な検査光を作れます。
大切なのは、光源の名前ではありません。
です。

傷によって「見える光」は違う
ひとことで「塗装を見る」といっても、確認したいものは一種類ではありません。
点光源
スワールマーク、洗車傷、線傷などを見るときに有効です。小さな高輝度光源を使うことで、傷による光の乱れを浮き上がらせます。
面光源
塗装全体の艶、曇り、コーティングの拭きムラ、ハイスポットなどを見るのに向いています。点ではなく、パネルを面として確認するための光です。
ライン状の光
パネルの歪みや面のうねり、プレスライン周辺など、反射像の変化を見るときに有効です。色温度を変えることで塗装色やメタリックの見え方も変わります。
つまり、

大切なのは「全部点ける」ことではなく「切り替える」こと
ここがCrazy Colorzが照明で大切にしている部分です。
全体照明を点ける。
必要なら消す。
点光源へ切り替える。
面光源で見る。
光量を変える。
色温度を変える。
光の角度を変える。
ライトを動かす。
見る人自身も動く。
場合によっては、LEDだけではなく異なる特性を持つ光源も使う。
車のボディは平面ではありません。
ボンネット、フェンダー、ドア、バンパー。
場所によって曲率が違えば、光が反射する方向も変わります。
だから、施工場全体をただ明るくして、同じ場所から眺めているだけでは足りません。
照明設備の価値は、
だと考えています。

Crazy Colorzでは「なぜそうなるのか」まで考える
Crazy Colorzでは、ラッピングやコーティングを単なる職人の感覚だけではなく、できる限り科学的な視点から捉えるようにしています。
もちろん、現場で積み重ねた経験は非常に重要です。
でも、
「昔からこうしているから」
「なんとなくこっちの方がいいから」
だけでは終わらせたくありません。
ラッピングなら、フィルムの温度や伸び、粘着剤の性質、素材との相性。
コーティングや磨きなら、塗装表面の状態、研磨、温度や湿度、光の反射や散乱、そして照明条件。
現場で感じたことに対して、
どういう条件なら、もっと正確に判断できるのか。
そこまで考える。
今回の照明も、その一つです。
経験を科学で否定するのではなく、
それがCrazy Colorzの施工に対する考え方です。
なぜコーティングブースは、ここまで派手になったのか
もちろん、大量のLED自体が悪いわけではありません。
明るい施工場は、安全な作業やパネル全体の確認には非常に有効です。
そしてもう一つ。
暗い壁。
規則正しく並んだLED。
磨き上げたボディへ何本も映り込む白いライン。
確かに格好いい。
SNSでも目を引くし、「専門店感」も出ます。
空間をデザインすること自体は悪いことではありません。
Crazy Colorzも、見た目は大切だと考えています。
ただし、
ライトの本数と施工技術は比例しません。
“映えるブース”と施工技術は別の話
大量のLEDに囲まれた車は確かに綺麗です。
でも、それだけで施工品質を判断することはできません。
本当に見るべきなのは、
「LEDが何本あるか」
ではなく、
です。
明るくする。
暗くする。
点で見る。
面で見る。
違う光で見る。
角度を変える。
場所を変える。
複数の条件で確認することで、初めて見えてくる傷があります。
だからCrazy Colorzが大切にしているのは、単純な明るさ競争ではありません。
LEDで着飾った施工ブースが悪いわけではありません。
ただ、
塗装状態と求める仕上がりに合わせて選ぶ
照明条件を変えて塗装を確認するのは、傷を見つけるためだけではありません。現在の塗装状態と、オーナー様が求める仕上がりを見極め、合う施工を選ぶためでもあります。
Crazy Colorzでは、車種、塗装状態、保管環境、ご希望の仕上がりを確認したうえで、下地処理とコーティングをご提案しています。
現在の傷や曇りがどこまで整えられるか、GLAREとセラミックのどちらが合うか迷われている段階でも、
お気軽にお問い合わせください。








